集英社 2012年12月刊 平山夢明 暗くて静かでロックな娘チャンネー

暗くて静かでロックな娘

暗くて静かでロックな娘

「独白するユニバーサル横メルカトル」以来の平山夢ちゃん読書。「ダイナー」で受賞とか長編も興味はあったけどいろんな事情で読んでない。「…メルカトル」の呆れた読書体験を綴ったわたしの日記の所在場所は以下に。

http://d.hatena.ne.jp/kotiqsai/20070105#1168004103

でもってこちらの作品集には「Ω…」に匹敵するほどの横綱大関級は見当たらなかった。西村賢太私小説をバカにしたよな「兄弟船」がまあ煙突倒れたし痛快な惨めったらしさでよかったか、「人形の家」の陰部の陰惨さなどとても良かったけれど突き抜けるような読書の喜びは得られず。各短編、味は出してるし下品さ、胸糞悪さも健在なんだがきちんとおさまっていて残念か。「悪口漫才」など悪くないアイディアなのにこれじゃウシジマくんにそうとう差がついちゃってるし。
帯に「やめろ。彼女は目と耳が不自由なんだ」というセリフが大きな文字で記してあって、まあだからナントカコードに引っ掛からぬよう配慮の結果だと思っていたら、表題作中バーテンがその通りのセリフでぶっ飛んだ、そんなとこで障害者に配慮してるあんたか?とね。

「…せいぜい尻の穴で稼いで生きるのが関の山のオカマの目糞野郎だ…」(サブとタミエ)
「…しょっぱい便所営業のズベタをキチモトの、どいつらだかが出歯亀してやがった…」(ドブロク焼場」
「…こんな女を抱くぐらいなら梅毒の淫売に突っ込んだ方がなんぼかマシだぁ」…(「反吐が出るよなお前だけれど…」
「…あんたみたいな中卒にもなれない脳味噌とっぱらいのヤクザをよくお天道様が許してるよ!自殺しな!自殺しておくれ!…」(同上)
…「因業ババア!死ね!地獄まんこ!孫は奇形児だらけになれ!」「なんだと!このチンポコ素麺!」…(人形の家)

こんなすげえ言語感覚の作家が「あいつは盲で聾だ」ではないとなんだかもの凄く不気味だったよ、わざとかな?表題作についてはまあイマイチだったか、ワニに喰われるグロな描写がないのも寂しいし昔「ミニミステリ集成」だったかE・クイーン編のアンソロジーで“ライオンの大口に頭を突っ込む技の猛獣使いに殺意をもった某が猛獣使いの頭にコショウを振掛ける”っていうようなのと同じで、まああまり面白くなかった。
「日本人じゃねえなら」うーん、悪くはないんだがそのノコギリ云々ってのがなんともいえずこれくらいのテイストでいいのか、なかなか難しい。もうちょっとグロも見たいし逆に兄妹が溺れて死んでゆくタイタニックみたいを抒情的に語ってほしくもあったし、読後にちょっといろいろ考えた。