文藝春秋8月刊 デイヴィッド・ピース 酒井武志[訳]TOKYO YEAR ZERO 2 占領都市 CCUPIED CITY

占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉

占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉

「TOKYO YEAR ZERO 」刊行直後の著者デイヴィッド・ピースのインタヴューの載るページは以下に、文春のナニですのでまあPRですよということでよろしく。

http://www.bunshun.co.jp/tyz/author.html

構想的には第4部まであったそうで、でも第4部を導くほどの犯罪がオリンピックの行われた当時の日本に見いだせなかったというのは、残念というか辛いですね。日本国民的には“水俣病”とか“森永ヒ素ミルク”とか“草加次郎”とか─著者の英国人は往時の島倉千代子の美貌に関心を持たなかったのかな。“横須賀線爆破事件”とか“永山則夫事件”とかは戦後ニッポンの貧しさ悲しさ息苦しさを象徴する事件だけれど、いまどきのガイジンさんにそんなの分かってほしくもないか。
犯罪小説という括りだけど、何だこれはわざとの純文学ねらいか…いやそれ以前に吉増剛造稲川方人みたいな現代詩をねらってんじゃねえのとイライラみたいなオマノトペだのルフランだのシュプレヒコールだの呪詛だのを、いつまでもいつまでも繰り返し止まない。これって半世紀前の焼け跡闇市に戻るための呪文なんだと思われたならば、まあ日本人も舐められたものです。
わたしは昭和30年代半ばの日本の地方都市の姿を知っています。ちょっと懐古趣味もあるので20年代の都市の姿など画像なんぞは好きなんだが、まあほとんど寂しい光景ですね。戦前の都市とかのほうが威厳があったりするしね。梅ちゃん先生バラックって個々の人にとってのノスタルジーではあっても、やっぱり戦後の歩みって貧乏臭いしつぎあてやももひきが見えるってところで、そのへんまでこちらの小説では表せてません、当たり前だけど。
731部隊が事件に関連していた…かもね、という落とし所なんだけれどもひとつリアリティにはなってはいない、石井とかが米ソ進駐軍に誇示するための犯罪なのか、かつての部下の暴発(金欲しさの犯行)に動揺する石井や進駐軍なのかくらい絞ってくれないとクライムのベクトルが薄まっちゃう。逆にコルサコフ症候群か狂犬病ワクチンなのか虚言癖の人となったらしい平沢貞道のその病歴とかをもっと知りたくなっちゃいましたね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%B2%A2%E8%B2%9E%E9%80%9A

平沢貞道のWikiを読んでみるといろいろ新しいことも知る。