文春文庫2011年3月刊 太田忠司 落下する花 月読  中公文庫2011年5月刊 太田忠司 予告探偵 木塚家の謎

落下する花―“月読” (文春文庫)

落下する花―“月読” (文春文庫)

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こういう省エネミステリって、読み終えて非常に頭にはくるけれど何かのヒントを含んでいるような気もするんですね。“謎解き”というのかトリックの構築にどうしても作家の労力が割かれるせいで小説としての面白さが損なわれたなら読者としては苛立たしいわけなのだから、トリックの部分をパッケージ化するとか、太田忠司が2作で行ったような特殊な設定を付加することでドラマを盛り上げるというのはありかもとは思う…って、確固たるドラマがあるならミステリでなくてもいいんだけど、需要の関係から“ミステリのほうが売りやすい”みたいな供給サイドの思惑もあるのならね。いやいや、この2冊の弁護しているわけではないです。両者とも設定で納得なんてできないし、ドラマというほどのものはどの短編にもほとんどない。
佐野洋なんて殺人方法がもう画一で鈍器で気絶させて絞殺ばかりで、まあつまりはH0W?ではない犯罪ドラマなわけで、そういうのが好きな人はでもミステリでなくてもいいわけでそこが佐野洋の弱さつまらなさになっちゃう。
太田忠司にも少しドラマへの希求があれば、予告探偵の傲岸不遜さをもうすこし面白く楽しく新しい何かになるだろうが、ま難しいですね。