文藝春秋2月刊 佐々木譲 地層捜査 含むネタばれ

地層捜査

地層捜査

情けない読後感だ、2月の新刊全般にもうなんだか魅力を感じず「ウーム…吉村作治先生でもよんでみようかしら」と書店で手にしたら、一冊しかないそいつがちょっと薄汚れていて見逃しちゃったんですよ─って小僧のお使いじゃないんでも少し人生腰を据えなきゃねと、いまさら憂いてみても仕方ない。佐々木譲をめっちゃ嫌いではないです。えと、どこかでひとこと記したな、ああそう《09年2月22日エントリ「制服捜査」》に関してです。あら全然誉めていないか「愚か者の盟約」でカラスの死体がいいとか、もうあとはよく覚えていません。
でもって「地層捜査」は、まあミステリではない。主人公の相棒役(元警官で相談員)が証拠隠滅─それも捜査報告書の一枚を処分するんだからとんでもないことです─だから警察小説とか捜査小説ともまあ違っていて、じゃあなんといえばいいんだ、直木賞を貰うってことはこういう省エネ小説書いて残りの人生、小説家で生きていけるということなんだなと、読後に凄い脱力感。
新宿区荒木町、散歩コース地図を案内に一周したことがあります。新宿歴史博物館にもいったし通称バブルの塔の廃墟ビルの脇も歩いた。現在のgoogleマップだと宗教法人解脱会の本部が載っていて、でも小説中にはそちら関連は何も書かれていないんだが、それでいいのかな?
地層捜査という名前の通りで、かつてバブル期に思惑が乱れた地域での殺人なので、そちら関連の捜査が行われたのに実はもう一つ古い三業地の頃の事件が発掘される(東京女子医大病院が絡む)一方でバブル以降の暴力団のしのぎである闇金融での殺人事件が浮かび上がる(こちらはフジテレビが)という感じで「地域には地層がある」みたいなオチなんだが、それにしても警官が捜査するのだから、書き手ももう少し緊張感持ってほしかったなあ。