角川文庫 2月刊 森絵都 ラン

ラン (角川文庫)

ラン (角川文庫)

その、なんとも残念というか困った読後感。パラレルに死後の世界を措定した作品はあまたあっても、ここまで平板で奥行きのない駄作は希有かと疑う。山田太一異人たちとの夏」とか浅田次郎「地下鉄に乗って」「角筈にて」とか、お手本いっぱいあるのになあ。
フッターにリンク貼ってある「誰か昭和を想わざる」の猫男爵森絵都原作のアニメ「カラフル」がいたく気に入ったそうで感想文を書き連ねていたが…あらら残念サイトは現在“工事中”のようです。わたしは読んでないし映画観てないけど「カラフル」も自殺した中学生が、も一度この世で生き直すみたいなストーリーだそうです。あ、そうかわたしの森絵都体験は一冊のみで、紀行文か登頂記というジャンルか「屋久島ジュウソウ」を読んだきりで、あららダイアリーでは一行しか読後感を記してないや。

http://d.hatena.ne.jp/kotiqsai/20090310#1236670936

こちらの作品、主人公の両親弟がさっぱり成仏しないのはわたしとしてはまあ理解する、交通事故などで即死だったりすると当人に“死んだという見当識”がなくてパラレルな世界にとどまるとかはあるかもしれんが、まさかそのまま暮らしているというその設定に呆れる。だからもちろんガンで死んだおばさんの霊などもう情けないだけ。仇役のスーパーのおばさんも「これ絶対あり得ない」設定だし、うーんとこれ中村文則ねらってんのか。いずれにしろ物語として提出するにはすこし雜すぎたのではないだろうか。青来有一の「てれんぱれん」だったら幽霊の出し方とか主人公の回心とかをとても素直に納得できたのに、無理やり青春文学に拘泥してるからいけない。もうすこし心に沸き起こってきたイマジネーションを素直に出せばよかったのではないかな。