中公文庫99年7月初版 石川達三 生きている兵隊

生きている兵隊 (中公文庫)

生きている兵隊 (中公文庫)

タイトルは文庫版「生きている兵隊」98ページより。砂糖ひと固まりを盗み食いした支那人(徴用したコック)を突き殺した炊事当番兵のエピソードに添えられた言葉。初出の雑誌『中央公論』版を底本にして、戦後出版された河出書房版「生きてゐる兵隊」をもとに伏字にされた箇所を復活して傍線が引かれた伏字復元版です。加筆・修正箇所もカッコをつけて付記したもの。ま、わたしとしては「文学の勝利」として、この本とか堀井憲一郎とかJ・G・バラードとかいろいろあるけど座右に置いておくべき書物としています。
河村名古屋市長の言いたいことはまあ分かるつもりだ、南京大虐殺30万人が定着することへの疑義はどのようなかたちでも提示できるならしたほうがいいと思う。とはいえここに「生きている兵隊」もある。南京入城から2週間後に特派員として現地入りした石川達三の見聞からうまれた小説、でも発禁処分・刑事訴追を喰らった作品であり単なるフィクションと片付けていいものではない。南京事件の有無、是非などに言葉を挟むほどの知識があるわけではない。ただ、このたび論争が惹起されたので、ここ数日でもう一度読み返した。
もう初老の石丸です、ドーソン「蒙古史」の小さな注までもう読めない老眼になっちゃったけど、悲惨さを受け止める膝や腰の耐久力はまだまだ鍛えなくてはいけないと思うし、そこのところが衰えちゃったら生きている甲斐がないんだし。
河村市長の発言の第一報を貼っておきます。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120220-OYT1T00971.htm