文藝春秋8月刊 赤染晶子 WANETD!!かい人21面相

WANTED!!かい人21面相

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芥川賞受賞作「乙女の密告」は読んでません。最近の芥川賞受賞作中でも抜群に売れなかったらしいですが、受賞第一作(表題作)と受賞前の習作ともども、読みにくいこなれの悪い文体・文章です。「少女煙草」という作品はついに最後まで読み切れなかったな、リズムが一本調子で読み急かされ、そのくせ急かされて読む意味が理解できぬ、徒労とイライラ感とが読み進むからあとからワラワラ立ち昇ってきて「なぜ読者がそんないら立ちを鎮める作業を進めねばならんの?」と、大変腹が立ってくるのが読中の感想、でもって一編読み終えてもそこにカタルシスはない。
表題作「とんがった思春期真っ只中とそれをはらはら見守るしかない能無し」というシェチはまあ甚だ多く青春マンガの王道パターンでもあるけれど、残念ここにもドラマも青春も友情もない、あるのは作者のせかせか書き込む一途の息苦しさのみ。その時代の関西人にグリコ森永はそこそこインパクトある負荷を負わせていて、でもそれって阪神淡路で切れてないのか?そいつがわたし的に小さい疑問。自分の住む町が犯人たちの行動範囲というのは子供心に響くと思うよ、でも女子高生だろ、宝塚受験してんだろ?なんだか分かんないなあ。島村洋子ならこんな小説書かないでしょ、ドラマはドラマ、宝塚とどこかで溝をきちんとつける。主人公であるバトン部補欠でマズルカダンスの名手<わたし>の切羽詰まりようだけは理解できたが、それだけじゃ文学にならんでしょうもっと本質的な虚構がなければ…というくらいのくたびれ読後感想です。