新潮文庫7月刊 植木理恵 シロクマのことだけは考えるな!人生が急にオモシロくなる心理術

シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)

シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)

“ハードな毎日を乗り切るための勇気をもらえる一冊”(カバー裏梗概)なんだが、実はわたしにはその“ハードな毎日”がなかったでござる。勘違いの購入だったか。
心理学の書物など読むのはどちらかというと人格障害やもっとその先のアレみたいな症例を怖いもの見たさで覗くような部分もあるわけで、まあそっちの記述が全然ないとスリリングではないですね…って何を求めているんだ俺は。

雑誌の対談などで、医師や弁護士といった専門職を持ちながら、一方でTVタレントやコメンテイターをしている方たちとお会いする機会がありますが、彼らは例外なく、まぶしいくらい堂々としています。
  第1章のいちばん最後あたり

ま、お里が知れるというか医師や弁護士でマスコミでも活躍している方が最高のステータスなんでしょ、著者にとって─もちろん、そんな方でないと釣り合わないキャリアの方のようですが。美人で東大卒(違った大学院修了)で、慶大講師でテレビでカウンセリングもしておられる著者には、お仕事関係では春日武彦みたいな修羅場というか危険な患者と対峙したことはあるんだろうか。
春日武彦の著書では、ちょっと前まで診断していた患者の飛び降り自殺(未遂というか助かったらしいが)をみてしまったとの悔悟(「心の闇に魔物は棲むか」の前書きだったか)があり、まあつまりは現場の担当医師でも、狂いの兆候を見極められない(他殺もあるだろう)らしいし。
この本の趣旨って「周囲から“いい人”に見られる」ためのアドバイスなんだが、でももう遅いぞ、わたしの場合は。まあそれは仕方がないので現実には“どうでもいい人(無害な人)”にみられようと精魂こめて行動していますが。
この年齢となると、不幸や不運もまあ道理というか軌跡として受け入れるしかなく、3・11で重傷だろうが罹災だろうが、生きているならそれなりに歯を食いしばって前進するしかないわけで。こういう書物であっても災厄通り過ぎてでも読むに堪えるものでないならなあと、いやごめんね、けなしてばっかりで。でも上記「未見坂」のように、重く苦い体験のない人生なんてばかばかしいしね。でもさ、災厄っていってもヴォネガット「タイムクエイク」みたいなのは勘弁だけれども。