角川文庫 10年10月刊 京極夏彦 豆腐小僧双六道中 ふりだし

文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)

文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)

今月の角川チラシに第2弾単行本の紹介も。「豆冨小僧」が3D映画化も上で書いたな。まあ波乱万丈のコミックスに改変されているのだろうが、でもねえこちらの小説、波乱万丈でも奇々怪々でもないというか、小説としてドラマもストーリーもありません、ほとんど求心力がなく腐抜けで間抜けな読書体験でした。3D映画を見て原作を読みたがるお子様がおられたら、それはそれはかわいそうです。
存在と認識、みたいな問答が全体のテーマか、人が感応したときのみ存在するという概念としての妖怪だの人魂だのをこんなに一生懸命解説していただいてありがたいのだけれど、認識されなければ存在しないはずの妖怪が豆腐小僧と禅問答をするかよ、しないとお話にならないのだがこんなに分厚い書物になるほど蘊蓄傾けるほどのものじゃないよな。豆腐小僧という妖怪、カバット先生の本でわたしは初めて知ったのだがそれも10年ほど昔の話、江戸のメディアが生んだ新世代の妖怪だというが、それにしては短命だったではないのか。
アダム・カバット先生の「妖怪草子 くずし字入門」で実はわたし、見越入道を初めて知ったほどでまあお化け全体に知識はないんですし、ほんの少し勉強しただけで江戸のくずし字も読めるほどにはならなかった。“は”という字は者という字をくずしたというけれど平仮名の“む”とか“を”とかに似てるというかパソコンではフォントはないのか…あるみたいだがまあ、わざわざ入れるほどのものか。
とはいえ江戸時代の書物を読めないのは英語が読めないのと同じくらい寂しい。外人のカバット先生がこんなふうに入門書記しているのも変な気分だね。その入門書内で初登場の際の豆腐小僧は単眼なんだな。単眼の化け物はけっこうこの本にも出ていて、みんな怖かったんだろうね、わたしも怖いけど。

妖怪草紙―くずし字入門 (シリーズ日本人の手習い)

妖怪草紙―くずし字入門 (シリーズ日本人の手習い)