文春文庫 11年1月刊 小川三夫聞き書き◎塩野米松 棟梁技を伝え、人を育てる

棟梁―技を伝え、人を育てる (文春文庫)

棟梁―技を伝え、人を育てる (文春文庫)

サブタイトルの「技を伝え、人を育てる」にほぼ特化した一冊で読後非常に落胆した。職人世界での人材育成のハウツーを見出そうと編者や版元は狙ったのだろうし、彼らが期待したものを棟梁もきちんと語ってくれているので、そういう話題を欲していた皆さんにとってはよい読書だったかな。
だがわたしが何を求めてこの本を手にしたかといえば、特殊な職場ならではの不思議な技や原価・工賃その他いろんなエピソードが知りたかったわけで、つまりは最初からアプローチの意図がずれていたわけです。
以前にも記したけれど、宮本常一伊丹十三、それに文春ならでは里見真三といったインタビュー名人が手品のように逸話や巧みを聞き出してくれている。もちろん読者とシンクロするしないは各々次第ですがね。
あと、小林秀雄の文春文庫対談集中に(絶版のようだ)宮大工へのインタビューがあったと記憶しているが、それって小川棟梁の師匠だったのかなあ。