2010 8 中公文庫 新刊案内


表紙 石田衣良「リバース」カバー&案内 表紙裏 単行本近刊

どうにも新刊から購入したい本をみつけられず、上田秀人「闕所物奉行 裏帳合(三)赤猫始末」を購入しましたがもう「ごめん、こんなんで」とだれかれかまわずに謝りたくなるような読書体験で、最後まで読まずに脱力のまま放り投げる。闕所物奉行という赤紙貼りまわる仕事みたいな賎業の主人公が厄介な事態を打開しようと努力する設定は悪くはない、でもなぜ物語が時代劇なのかの根本がまったく分からぬ。現代の権力闘争とか企業のお家騒動とかのカリカチュアでもなさそうだし、ここには理想もカタルシスもないんだよなあ。。
佐伯泰英ほかポスト藤沢みたいな時代劇作家、いくつか読んで思うのだが、時代劇体験のベースがテレビドラマなんじゃないのかな。殺陣・闘争シーンがひどくつまらなく安っぽい。ハードボイルド小説などに暴力シーンの秀逸なのはあるのだから勉強不足というしかないでしょ。戦い、争いのコードが違うことへの違和感が強い。刺客集団がいろいろおしゃべりしながら殺陣を披露目て死んでゆくシーンにはスリルもサスペンスもない。
もしかしたらわたしの歴史認識がとても不自然で、えらいお殿様とか将軍様とかも、生臭い人事や失脚の話を平気で江戸城ナントカの間でざっくばらんに話していたのかもしれないが(近世史の研究ではそれは常識だったりして)そのへんも含めてついに読み物に共感を感じられなかった。