光文社文庫10年3月刊 笹本稜平 恋する組長

恋する組長 (光文社文庫)

恋する組長 (光文社文庫)

トキを大量に死なせてしまった責任者は笹渕紘平、ちょっと名前が似てますね。責任を取って左遷させられるっていっても今は佐渡だし、あとは西表島か知床か。気象庁だの環境省は本省でデスクワークが左遷だったりして−冗談はともかく。
とても読みやすい小説。むかし新人賞に投稿していたわたし的にはよくわかるってやつ。これくらい書き込みしたほうが親切心に思うのだが、やっぱり読む側に回ると周囲のト書きや濃淡まで描きすぎで、読んでいてそうとう息苦しい。
ストーリー的にはもう、小林信彦「唐獅子…」で時代相を写し取ろうともがいた作者の切実さ苛立たしさをほとんど模倣さえしておらず紙芝居に堕していてひどく不細工、時代と切り結ぼうという気概がほしい。「幽霊同窓会」でヨガ(での心臓止め)のやりすぎでどんどん失調してゆく様は少し怖くて面白かった。