光文社文庫10年2月刊 霧舎巧 新本格もどき

新本格もどき (光文社文庫)

新本格もどき (光文社文庫)

まあ、びっくりしました、趣味が昂じるというのはこんなにあきれるようなことなのですね。跋で都築の「名探偵もどき」をいっていた。記憶にないな、読んでるとは思うし、でもこういった凝った企画で海外物でも─いや、西村京太郎にもあったし。
新本格とは一線を画しているつもりの石丸で、本格も新本格も殺人が一度おこるとそれから「葬儀はどうする」「お布施は幾らだ」「香典返しは」「弔辞はだれに頼めばいいのか」その他を極めればミステリーじゃなくて塩月弥栄子になってしまうんだけれどね─こんなふうに思うようになったのも高村薫のせいです、それ以降本格ミステリから一段降りた。
とはいえ、こちら霧舎巧の元本はみな読んでいるなあ。それほど流布されている有名作品をコラージュするんだから自信はあったのでしょう。どんでん返しや「ワトソン役」伏線の張り方(雑誌連載でそこまでやるか)など本格の作法は守られている。でもマスターのキャラは邪魔だなあ。