文藝春秋09年1月刊 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

デパートの屋上から降りられなくなった象のインディラは悲しいがバスから抜けられなくなったマスターには同情できないな。あと“昔々”アリョーヒン兄弟と祖父母の住む細長い家の隙間に入り込んで死んでミイラになった少女と同一視してしまう手品師の娘もなんだかおかしい。
143ページにひとこと「彼女はとても痩せていた」と記してあるんですけどね。

うさぎ そうなんですか。私、マツコさんは住宅街に住めないんだなと思ったのは、住宅街ってけっこう路地が多いじゃないですか。路地にはまって出られなくなったことがあるという話を聞いたので。
マツコ いえ、路地というか。前は新宿の河田町に住んでたんですけど、あのへんはごみごみしていて、家と家の間の細い抜け道みたいなのがあったんです。真っ直ぐだと通れないだろうなと思って横を向いたんですが、よく考えたら、友達が非常階段で真上からあたしを眺めたら「円」だったらしいんですよ。
うさぎ アハハハハ
マツコ でも、本人的にはまだ横のほうが薄かった記憶があったので、そのまま進みましたところ、はまりまして(笑)。来た側には名にか出っ張るものがあったので「これに肉をやられる」と思いましたし、進もうとしていた先は、ちょっとずつ狭くなってて、「どうしよう」と5分くらい考えちゃって」
うさぎ で、どうしたんです?
マツコ 下に落ちていた板切れを拾ってその出っ張っているもので傷つかないようにあてがって、フンッとお腹を引っ込めて、なんとか出ました。
 中村うさぎ 人生張ってます マツコ・デラックス 130キロ女装家のラブリーな日常より

というわけで、ミイラになってからはともかく路地に挟まる体型となるとマスターとか総婦長さんとか、もちろんそういう体型の人たちがリトル・アリョーヒンを援助してくれるわけなのでミイラの原型がマツコさんにそっくりでもちろんいいわけなんですけれど。