文藝春秋の新刊 1999・4 「人びと」  ©大高郁子

画風は現在とだいぶ違います、作家の視線。20世紀の彼女はあれだね、概念としての孤独やディスコミュニケーション・ディタッチメントを描こうとしてあがいていた。そうみるなら翌月99年5月の「何処へ」も理解できる。つまりはあれだ、マグリットの「大家族」か。
とまれ、画家はこういう場所からもう一段掘り下げられた場へ掘り進むことを選び、風景のない空間に小さなアイテムを選び出してコトリと置いてそのナンニモナサを理解せよと迫っているのです。
わかるけどさ、わかるんだけど、何とか作家がいまいる場所から脱出を試み、体をねじりこじ開け突き破り、「孤独は孤独よ」なんてあっけらかんとこんなお喋りたちを21世紀の視点で描いてくれたらいいのにな。