集英社文庫07年7月刊 沢木耕太郎 オリンピア

オリンピア ナチスの森で (集英社文庫)

オリンピア ナチスの森で (集英社文庫)

余命いくばくもない戦前のアスリートたちを取材した記録としては大切なのでしょう。が、残念なことに僕らの世代、ここに描かれたエピソードの多くを幼少時により劇的にインフォメーションされているのよね。昭和39年東京オリンピック時に小学3年生だったわたしは、少年サンデーなんぞの巻頭特集などあまたの媒体でいろんなオリンピックの語り草を知ってしまったのです。
陸上競技関連でいうと、それ以前のロス五輪に関しては広瀬正の「マイナス・ゼロ」ででも追体験したものだ。あちらではタイムスリップした主人公が覚えていた五輪の結果でトトカルチョして儲けていたっけ。
というわけで第8章「氷の宮殿」での日本人アスリートたちの後日譚はまあ、少年サンデーになかったストーリーだったので楽しく読んだがレニ・リーフェンシュタールへのインタビューも含め興味を持続さすことに疲れもした。とはいえ沢木耕太郎が「オリンピア」というタイトルで上梓すべきほどのものだったかは大いに疑問。ま、「一瞬の夏」以降の沢木の仕事ぶりをあまり評価できないわたしなんですけど。