創元SF文庫 読み終えた3冊

2007年7月刊 鏡明 不確定世界の探偵物語

まあ、タイムマシンができた時代だというのに携帯電話がないというのはどういうわけかな。
それはともかく全体の構図は楽しい。主人公(探偵)が活躍する時代はワンダーマシンによる改変のせいでモアベターな世界であると、探偵だけでなくすべての人間が思っていたというのに、実はまだ改変途中であるというのはいいアイデアだと思う。車で走り回る探偵が見る都市の風景が改変によって茫漠としている─みたいな描写がどこかにあったのだが探し出せない。みつけたら抜粋を貼りますね。
短編ひとつひとつはパロディというかどこかで見たハードボイルドの焼き直しなので論ずるほどではない。ジェニファーがラスト2編目で死んでしまうのは、小松左京の「時間エージェント」とのリンクを示しているのかな。でもあっちのほうが面白かった。アメリカとソ連と中国の首脳の子ども時代を誘拐してきて、それをインドの国連大使の子ども時代が躾けて、国連総会でたしなめるってのとか。
わるいけど、鏡明って人が作家として大成しなかったのがよくわかります。

2007年9月刊 堀晃 遺跡の声

なんだか人間同士による恋だのセックスだの倦怠期だのなんてつまらなくて、やってられないって気になるのが冒頭の「太陽風交点」。今は亡き婚約者(聡明な科学者だった)の脳細胞からできた宇宙船の様子を見に行くかつての恋人という設定は不埒だが美しい。調査員の“私”も人間っぽくなくて、だからそのへんを面白がるというのもハードSFの読み方なのだろう─っていうくらいでハードSFは食わず嫌いなわたしだったのです。
というわけでとてもすてきな雰囲気を持った冒頭作の余韻で読み進んだ以降の短編なのだけれど、地獄めぐりというのか、そういう作品はまあ今までも読んできたしな、何か違うかなってね。

2007年11月刊 新井素子 グリーン・レクイエム緑幻想

グリーン・レクイエムのみ読んで、その先に進めなかった。
彼女が植物人間だというのは謎ではないのか。もすこしそういった謎解きだのサスペンスだのを持ち出せないのかと、不可解な気分で読み進んだ。もひとつの不満はもちろん異生物同士のおぞましいか滑稽かはともかく性交シーンがないこと。