文藝春秋の新刊 2000・4 「春の宵」  ©大高郁子

ロゼワイン色の海がもうこんなに不用意でなまめかしい。
漁村の坂の風景か、夕焼けに染まる屋根瓦も親和の艶に囲い込まれる。だらしなくべたと凪いだまま遠近法など無視してたゆとう湾の海水たちの怠惰を、大いに肯定するような灯台の明かり。画面全体がこんなにエッチでけだるく無意味に陶然としているなんて、当てられたぼくらはにかむしかないぞ、春の海。
─というわけで、こういう風景・風情をのびのび描いていたイラストレーターでしたというお知らせでした。