新潮文庫今月購入 田口ランディ モザイク

モザイク (新潮文庫)

モザイク (新潮文庫)

世の中、けっこう凄い小説が流通しているのだなと、あきれた。216ページから226ページまで正也という少年が独白するのだ。まあそれまでにも精神科医だのがペラペラ喋りだし、もちろんそんな部分読み飛ばすのだけど。斉藤栄の謎解きページのつまらなさといい勝負だがあっちはまだラストのみだ、いま思うなら当書に比べれは罪は軽い。
もちろんダイアローグが小説の真髄でなんてないし、独白みたいな形で「どうでもいいエピソードや情報」なんぞの提出という苦肉の策であることはわかります…って読者がそんなこと忖度してどうする。小説として無茶すぎ破綻していることは作者も判っているはずなのに“新装決定版”と銘打った文庫版なのだが改訂改稿などの痕跡を感じなかった。

頭で分析するのではなく、身体で思考するような、肉体派の主人公を描いてみたくなった。
それで登場したのが、佐藤ミミだった。
ミミは、私がこれまで描いてきたなかで一番好きな主人公だ。こんな女性がいたら友達になりたいと思う。

と文庫版あとがきで記してあり、またこれが帯の惹句にも置かれているのだけれども、しかしなあこんな主人公、大藪春彦的みたいに類型的じゃないかな。でももちろんミミさんが冷感症であるのは作者の何かを投影しているんだろうが。