光文社文庫1月刊 大崎梢 ねずみ石

東京創元社から連作短編集がいくつも出ていたけれど、どういうわけか今まで縁無くこのたびが読むのは初めての作家ですが、うーむなんだか、がっちり骨格の本格物書ける人かどうかまでは分からなかった。ジュブナイルというか子どもが主人公のミステリってのはだいたい難しいもので、読み終えてもイライラ感しか残らなかった。とはいえこちら刑事雨宮を主人公にしたら読む気も起らぬ作品になっちゃっただろう。
サトとセイという中学一年少年二人が物語中途で嫉妬やさや当てしてるみたいに描いているし、あと被害者の女学生が主人公サトを慕っていたとか、うーむだからそういうリビドーでないと少年は動かないのか─少女はどうかな、なんかこういういい方ってひどいけれど、第3の被害者が算盤ずくでやられたわけで、となるとそういうふたつのベクトルをひとつの長編に集合さすことの無理がやっぱり大きく作品の質を下げることになったな。推理を従にしたかたちでのジュブナイルに徹してほしかったな、そうすることで読書中の違和感を中和させられたと思う。
ただまあ、主人公が記憶をなくしたせいで犯人が浮かばず、記憶がよみがえって大団円というのは推理小説としては大いに邪道だと思う。主人公がみれなかったものを推理の力で晴らさねばならない。あと補完するストーリーとして犯人側の家庭悲劇もジュブナイルである中途半端さのせいで屹立することはない。その意味では残念な読後感だったが次の作品を読みたいという気持ちも強く残った。すべてがうまくいく作品ってのはまあ少ないんだし。