光文社文庫 2010年12月刊 森見登美彦 美女と竹林

美女と竹林 (光文社文庫)

美女と竹林 (光文社文庫)

有頂天家族」を読み、まあ感激したのね、その後文庫で新刊が出たので張り切って購入したのになんだか思い違いだったみたいで、読み終えたけど放り投げていた。「四畳半…」とか「夜は短し…」とかの売れてる作品はどちら側なんだか、分かんなくなりましたね。
でもって、美女と竹林。いつまでたっても物語がはじまらない、知人から管理を委託された竹林に時々行っても、仕事がきついしアイディアは出ないし、本上まなみも活躍せぬ間に退場し、どうももっと妄想も爆発する気配もなく物語は一向に前に進まぬ。
えと、こういうのどっかで読んだな、カフカか?ル・クレジオか?と考えていたんだが、最近「あれって小松左京の『題未定』と読中のもどかしさが似てるなと思いだした。「題未定」のほうはあれ、週刊誌の連載だったはずだが、まあたぶん絶不調でアイディア枯渇で、でも連載始めるしかなかったのか。SF的なイシュー(未来の自分から手紙が来るとか)もあるがそれらがストーリーとして立ち上がらない、連載として盛り上がらない。半ばずぼらに連載始めた小松の自虐だけが空転し果てて終わる作品だった。で、こちら「美女と竹林」なのだが、も少し妄想なり空想なりを注入すれば、何か小説になれたかもしれない。だがどちらかというとわざとその妄想を寸止めさせているような“歯がゆさを芸にする(しようと頑張る)”試みみたいなものが滲み出る。「題未定」も「美女と竹林」もまあ、つまらない不毛な読書体験だけれど、つまらない作品にしかならないと悟った著者の匙の投げ方の見本みたいで、それなり面白い…かな?
とはいえ、今後森見登美彦につきあうかといわれるとむずかしくなったのは確かか。