新潮文庫11月刊 曽野綾子 貧困の僻地

貧困の僻地 (新潮文庫)

貧困の僻地 (新潮文庫)

小学生の頃、シュバイツァー野口英世の伝記は読んだし、その時はわりとアフリカの奥地で暮らすことのいろいろも想像できたんだが、あれから50年過ぎわたしもその周囲も見事に成熟しきってしまい、シェラレオーネ、ブルギナファソ、マダガスカルその他での暮らしぶりなど曽野綾子の見聞にけっこうげっそりし、ちょっと柔らかくなりすぎていた自身の耐性に正直驚く。とはいえ、自宅が津波で流されればそれなりにサバイバルしちゃうだろうけど、やっぱり貧困に浸れはしないだろうし、それがまあ一応は高度成長のためにモーレツに生きたわたしたちやその上の世代の矜持ではある。
でもまあそういう貧困の現場に進んで行けるのはたいしたことだし、彼女のお説教の臭みを抜いてから中学生の副読本くらいにしたいものだが、貧乏を知っているわたしの世代でさえもう想像力の果てみたいな“貧困の僻地”だもの、二十代十代には伝わらないだろうし、まあでも行こうと思えば奴らならすぐに行けるし…☆ホテルでガイド付きで行ってもしょうがないけど、垣間見ることはできる。
もう80歳くらいな曽野綾子だろうから、文章の求心力がすこし衰え気味であちこちシーンの展開が唐突だったりもするが、いろいろ彼女の経験が凄すぎるみたいでその唐突も芸のうちみたいに楽しめる。