幻冬舎文庫6月刊 酒井順子 携帯のない青春

携帯の無い青春 (幻冬舎文庫)

携帯の無い青春 (幻冬舎文庫)

まぁこのぉ…目次をみたならそれぞれの項目、わたしもひと言ずついえそうです。食べ物関連が「クレープ」しかないのが淋しいが、まあ可愛い都会の女子高生だった著者は、食べ物関連よりふつうのお遊びのほうが性に合っていたんでしょう。「甘党ぶらぶら地図」だったか、全都道府県まわったわりには絶滅寸前だったり、トレンドから外れてたりでカタログとしてもイマイチ、読んでいて幸福感に浸れるものでなかった。ま、得手不得手はだれにもあるわけで著者は「負け犬」「鉄子」その他多くの人生ニッチ物品をみつけ出すすてきな案内人です。
団塊の世代より以降に生まれた人々(あなたもわたしも)は、基本的にいい(偉くて立派な)大人にならない(なれない)生き方を選ぶしかなかった。団塊どもが学生運動で燃えてた脇で、わたしたちは催涙ガスの奇臭の新宿で目をしょぼつかせて買い物をし、団塊どもがバブルで踊りバブルを弾けさせた後の茫漠をのろのろ歩まなくてはならなくて。
もちろん団塊どもも偉くて立派な大人になれなかったが、そのあとを歩むわたしたちは彼らの傲岸で無恥ぶりに我慢できないんだよね、それは何歳になっても続くわけで、わたしと同世代の野田総理が、鳩山・菅のしりぬぐいを唖然としてやっている姿にひとつの典型をみるんだよね。そこから十年年若い酒井順子世代はきっと、わたしたち世代の優柔不断ぶりのせいで、大人にならない宣言しちゃってて、でもそのくせ歳だけはみんなでとらなくちゃいけないんで、こんなふうに時々過去を笑って総括しないといけないんでしょう。とまれまあ、わたしにとってはある種、いい意味での脱力とため息の読書体験でしたが、反面、若い世代にこの本読んで哄笑されたい気持ちもわりとあるんです。