光文社文庫 3月刊 結城充考 プラ・バロック

プラ・バロック (光文社文庫)

プラ・バロック (光文社文庫)

第12回日本ミステリー文学大賞新人賞だそうです。わたしも応募したことあるんだろうな。

http://www.kobunsha.com/company/scheherazade/mistery_new.html

何年頃にどんなので応募したかなど、どこか調べりゃ分かるかもしれないが、いずれにせよ予選通過さえしなかったし、まあいまさらどうでもいいや。でも顔ぶれみて思うに、なんというか小説家として生きてゆくのも大変そうだな、まだ時代小説のほうが需要があるのかしら。
新人賞受賞作としてみれば、及第点か。起承転結や読みやすさなどプロに認めさせる筆力・構成力はあります。自殺サイト殺人事件の顛末を知っていて、犯人にたいしての感情はともかく、システムとしてはまあ普通に“ありかな”とは思っている。

http://shadow9.seesaa.net/article/108631187.html

とはいえ2か所で一度に20人ずつってのは、もうすこし簡単にネタが上がると思うな。自殺願望者をちょっと記号にしすぎたのではとの疑問。集団レンタン自殺者中にも語りたがり屋はいるし、つまり20人でも3人でもいいんだから、ちょっと煽りが厳しいかとも思う。
ネット上で罠をしかけた人物と犯人と警官と、バッティングしていたというのは何だかものすごく安っぽくないか。もちろん仕掛けは必要なのだが、少しだるいとかそんなの。
言っても仕方ないのだが、自殺ほう助者と、ほう助者を罠にかけるものとの神経戦に持ち込んだほうが小説の絞まりはよかったと思う。
クロハという女性刑事が美人すぎることの意味が不明だ。銃のエキスパートだけで十分かと、美人すぎたからどうこうが描けてないんだしね。続編で意味が出てくるかもしれないが。
わたしの勤務するショッピングモールの警備、たいそうな美女がいるし、とてもキュートな女性もいる。体格がいいしキュートなほうは脛がプリンと豪儀でスポーツウーマンなんでしょ。だから美人すぎる婦人警官が不自然だといってるんじゃないんです。
あと、女性刑事の身内が殺されちゃうのはどうも好きになれないな。わたしが警官の息子だからだろうか。父が警備畑にいたころだが、宿直の夜に限りコミュニストから嫌がらせの電報が届き、母が精神的にダメージを受けた。事件になり犯人は検挙されたが、だからといって脅された側が安心ということはない。ほとんど(すべてとはいわぬが)の犯罪っていうのは物理的・心理的・経済的なダメージを与える作業・行為だから、犯罪小説家にはダメージへの気配りというか忖度というか、そういう視点が全くないと救われない。
20人の集団自殺だと、20の葬儀が行われるわけでそれが2か所だ、40の葬儀を小説の背後に霞みでいいから見せてほしい。もちろん次作品があるなら残されたアトピーの甥との暮らしが描かれ、そこでこそ作者の真価が問われるわけだが。