光文社文庫 2月刊 海老沢泰久 追っかけ屋愛蔵 

追っかけ屋 愛蔵 (光文社時代小説文庫)

追っかけ屋 愛蔵 (光文社時代小説文庫)

以下のアドレスは「旧暦・和のこよみ」というホームページ。このたび、自分の失態を恥じ、きちんとお勉強しなきゃと思いました。

http://koyomi.wafusozai.com/

かつてダイアリー内で近藤史恵「にわか大根」の感想文中に「江戸時代に“四月”なんていうのかな?」と大変恥ずかしいことを記した。睦月・如月…と普段の会話で使うのかなと、勝手に考えていてこれはドジった。こちらの小説ではきちんと年月まで指定してある。さあ、鬼平とか剣客商売に三月・四月なんて用語が使われていたんだったっけかなあ。
小説に関してはなんともいえない。口入れ屋関連だと「用心棒日月抄」という傑作中に、豆だぬきに似た相模屋吉蔵という名脇役の仕事ぶりや日常で、なんだか小所帯な個人営業みたいに勝手に思い込んではいたところはあり、口入れ屋には召使いが寄子を集めるとか、そういう様相を思い浮かべずに読み始めた。
荻生徂徠の「武道ノ衰退ニテ、武家ノ為ニハ至極ノ悪キコト也ト知ベシ」とかが挿入されたりの補強作業はすてきだけれど、小説として会話に妙味がなく説明のくどさなどがつらい。それ以前の問題としてストーリー・ドラマが江戸になってない、平成の時代小説はほとんどみなそうなんだが、わたしより年長であった海老沢氏ならも少し頑張れなかったか、まあでも「監督」みたいな成功作では、そんな説明口調がうまくいっていたわけなのだが。
「愚か者の船」というバブル解説小説はよかったな。あの設定で歴史ものにチャレンジしたならたぶんいろんな鉱脈に近づけたのではないかと思うが、もちろん50代での死は当人も思いもしないことだっただろうが。