幻冬舎文庫10月刊 木下半太「悪夢の商店街」

悪夢の商店街 (幻冬舎文庫)

悪夢の商店街 (幻冬舎文庫)

いやはや納得できない読書体験でした。本当は壁にぶつけたあと何もなかったふりをする方がいいのだが、今後ほかのだれかが騙されるのを座視できぬからとひと言だけ記しておく。
なによりもこれって物語として成立してない。ストーリーは弾まず主人公たちのキャラも立ち上がることがない。物語全体をフローチャートしてないだろ作者は。事柄の大小とか因果とか図式とかそういうシステムをまったく感じられないんだもの、こりゃあきれるなあ。
携帯サイトに連載されたものの加筆訂正版だそうだが、これって連載中にそういう疑問が読者から届かなかったのかな。届いても直すのは難しそうだが。作者が登場人物たちを信じていないから、こんな一人称小説では破綻が約束されている。漫画の原作程度にするつもりだったなら、もすこし登場人物から視点を離し名場面やナイスな一言を貼り混ぜてゆく方がよかったか─とはいえ、このプロットでは漫画の原作としてもひどく弱いが。立体的なストーリー構成を心がけてほしいです。