購入したのは佐野洋子「覚えていない」

覚えていない (新潮文庫)

覚えていない (新潮文庫)

未刊エッセイ拾遺集とあとがきで記してあった。“バブルの頃の文章”“50代の若書き”などと記してあるが、初出が知りたい部分もある。とまれタイトルは帯に書かれている「忘れてしまったことの中にこそ人生があった」とはそうとう違う意味みたいだね。楽しい読書だったけれど、この楽しさは古典のバリエーションなのですね。

「ねえ、あなた、大きくなってお嫁さんをもらう時にね、一人はすごーく美人でね、それが意地悪で、バカで欲張りで、わがままで悪るーい奴なのね。もう一人はブスで、優しくて、頭がよくて素直で、すごーくいい人なのね。それでどっちもあなたのお嫁さんになりたいといったらどっちにする」。息子はコロッケを食うのをやめた。そしてA、じっと皿をみて、非常に非常に長い間沈黙した。そして私の目をひたと見て、
「あの、ブスって、前に居たら、ごはんもたべられない位?」

読点の使い方など勉強になるような、わりとラフで参考にならないような。内容に関したは参考にはならないだろうな。