早川演劇文庫08年7月刊 マキノノゾミ 1 東京原子核クラブ

これが読売文学賞ですか、そんな大層な戯曲か。読み終えてもドラマの妙味を理解できない。そこそこ楽しいドラマではあるがこれじゃテレビ番組以下の毒しかないし、いいところ学芸会のシナリオだろ。天才学者の青春の一齣だとまえがきあとがきなどの予備知識を知った読者(芝居を見に行った人も)でなければ、芝居のなにをわかればいいのかを捉えられない。
物理学者が原爆での死者に顔向けできるかなどと、したり顔で主人公たちはダイアローグ繰り返すけど、それとこれとは次元が違うことなので戯曲のテーマとしては散漫でした。そのへん作者の付け焼刃加減がとても情けなくでていて悲しい。マッドサイエンティストを登場さすか(マンハッタン計画オッペンハイマーフェルミ・ボーアその他)そうでなければ戦争よりも立身出世の学者バカに徹するかであったら、ひとつ突き抜けた人間のドラマになっていたのでは。…「道元の冒険」みたいにさって、ま、日本にはものすごい先達がいるってことをいいたいだけなんだが。