集英社文庫08年7月刊 今野敏 琉球空手、ばか一代

琉球空手、ばか一代 (集英社文庫)

琉球空手、ばか一代 (集英社文庫)


先日の代替空港(6月28日エントリ「山本賞パーティ」リンクしてません、フッターにURLから飛んでね)で、今野敏氏を褒め上げていましたね。

山本周五郎)賞というのは功労賞ではないけれど、恐らく過去20年、日本の文壇にこれほどの貢献をしてくれた男はいません。
普通の組織なら、ここに権力とか絡んで、あいつはでかい面をしているみたいなやっかみも出てくるんだろうけれど、彼に関しては、その徳のなせる所で、そういうことも無く、みんなが気持ちよく仕事に全力投球出来る環境作りに貢献してくれた。
過去20年を振り返っても、これからの20年を予想しても、周囲がこれほど誰かの受賞を素直に喜べるような状況はもう二度と来ないと思う。

人となりは知らずわたしは昨年末ころ、初めて読んだ「朱夏」という警察小説の読後に“ひどく失望した”という趣旨の感想文を記した。それ以来彼の小説を読んでないわたしが五月女ケイ子でカバー買いしたのが当書です。
道場の運営に関する話、面白いが先にたつけどそれにしても驚嘆に値する人だね。代替空港もきっと本当なんだろうしこちらで記している道場経営も本当なんでしょ。そういうスキル、処理能力を持ちそつがなくお酒も強い。そういう社会性の持ち主って実際いるんですよね、今野敏がそういう人なのはよーく分かった。でもさ、その円満さ、そつのなさ、サービス精神のせいできっと彼の小説はあれほど平板なのだと思うよ。結局、表層的な円滑さ、スマートなフォルムを作家は価値観として見出し提出してしまうから文学の深み(澱だの毒だの)を含まぬ“作り物”のドラマに見紛ってしまうのね。もちろんそのせいで彼の作品に人気があるのなら何もいわないんだけれどさ。
燃えよドラゴン」事件(少年篇・7…校閲のひとが気付いても直さないって如何?)はちょっと悲しかったですね。わたしと同世代でドラゴンに惹かれてという人は大勢々々いたけれど、このエピソード知らなかった人なんて今野敏ただひとりでしょ。そのくせ少年今野は「グリーン・ホーネット」視ていたというし、何だかいろいろアンバランスというかいびつな知識の持ち主みたいな人に感じられる。