集英社文庫 07年8月 清水義範 新 アラビアンナイト

新 アラビアンナイト (集英社文庫)

新 アラビアンナイト (集英社文庫)

巻末で知ったことですが、この短編集22編中の16編がケータイ小説なんだそうです。単行本にはなってない文庫オリジナル。「the 読書」の住所は以下に。

http://www.shueisha.co.jp/special/thedokusho/

月々210円で読めるそうで、それが高価なのかどうかは不明。昨年ゴマ文庫で著名なケータイ小説が活字化したナニを書店で手に取ったが、まあ、語彙やらカタカナやら改行やらに呆れたものです。それに比べると(比べちゃいかんが)読みやすく、違和感はないですね。
それはともかくこの小説集、ひどくあっけらかんと清水義範がでてます。もう風格って雰囲気で昔からのファンであるわたしはこんな作者・作品を肯定しちゃいますが、でもなあ、もっとバーレスクをとか縛りというか技法への渇望を作者が捨てると、この先あっけなく老けたり人気も翳ったりしないかな。
「軍人になることを嫌がった…」や「坊さんも気絶する…」なんて、まあなんだ、ただのガイドというかレビューってのか、どうにも小説にまでなってないし、それよりなにより読者のこちらに知的興味みたいなものがすこしも湧いてこない。イスラムやアラブが悪いんじゃなさそう。銅像めぐりだって楽しくなかったしね。
清水義範で好きな作品、司馬遼太郎の語り口で社長一代記(社史編纂)って奴、タジマールのエレクトシーツでしたね。あれは笑ったね。タジマールでgoogle検索したら『蕎麦ときしめん』中の「商道をゆく」という短編だった。商売のことだけ考えて選んだ嫁さんは「…盥桶のタガが外れたような」顔だったとか、まあすごい比喩で、たぶん大平正芳みたいな顔なんだろうなと考えるだけで爆笑でした。
ま、そんな爆笑や奇想天外を期待しちゃったわたしが野暮だったのかな。文庫カバー、口絵、装画は宮崎照代。ホームページは下記に。

http://www6.ocn.ne.jp/~teruyo/index.html

色使いが派手で奥行きを感じさせ、引き込まれた。ホームページ内にも多くの作品が飾られているのでじっくり楽しんでみたい。