文藝春秋の新刊 2004・10 オリーブオイル©大高郁子

父が死んで我が家でもオリーブオイルを購入する食生活となりました。
どんなものを食べさせたのか分からないが、ある日母の作ったスパゲッティの昼食の途中で「俺はこんなものは好きじゃない」といったらしく、それ以来ずっとスパゲッティはわが家ではご法度であったそうです。
いやいや、わが家でオリーブオイルは使ってなかっただろうね。ママースパゲッティの缶詰か何かだったでしょう。麺類は何でも好きだった父だったから、既製品のトマト味が辛かったか、いやニンニク味が苦手だった父だから、そちらの風味が強かったかな。
オリーブオイルの香りは好きです。ただし、高級食材店にあるようなものは買えない。味の素とかメジャーの大衆的な価格のオイルで充分と思い定めてます。
目の醒める鮮やかなオリーブの実色のリーフレット。光を閉じ込めたオイルと、光の残像である影とが穏やかにでも交わることなく同じ彩度を共有し苦い親密。毎度のことなのかな、ちょっととぼけて瓶の黒い輪郭がわたしに肩の力を抜かせ、読書の楽しみをまたまた強く教えてくれている。