文藝春秋 2月の新刊 寺地はるな タイムマシンに乗れないぼくたち

先日、新刊案内を求めにジュンク堂へ行き、遭遇した短編集。文芸書の棚、ずらりと著者の本が並んでいたのに、すんません未知の作者でした。

いちばん最後の短編「対岸の叔父」が、短編集中で一番の新作のようだが、なんだか駄作だ。引っ掛かったのは「嫁さんのお父さんの弟」だと嫁さんにとっては「伯父さん」になるんじゃないかという疑問。引っ掛かったけどまあストーリーが追えたのでいいか。「対岸の…」それ以前の短編と比べて、説明過多でまた登場人物も多い。まさかいとこ(?)まで登場するとはね。

その前に並ぶ短編も、読みやすい、ストーリーが分かりやすい、登場人物に共感できると、中間娯楽小説として出来は悪くないけど「わあ凄い小説読んじゃった!」という風な驚き感動までいかずで、文学のデーモンとか闇とかを感じさせてほしかった。帯の惹句が「一人ぼっちのつもりだった。だけど、そうじゃなかった」となっていて、分かるんだが惹句と反対の作品も読みたい。

「口笛」という短編、最初は毛嫌いしていた中年女性が、地域猫の世話をしていたことを知り、自分の中で許すみたいな作品、こういうのでいいんだぜ感がいっぱいで(短編だから仕方ないが)少し興醒めか。まあでも人生はそういう具合に展開してほしいのです、その辺の自分の思いが、情けないか、いやいやそこは中高年であるわたしのよいところじゃないかしら。