村上春樹 一人称単数

装画は豊田徹也で、わたしとしてはカバー画は落ち着かない印象。絵にこちらの意識が引っ張られかけた。豊田哲也からのひとことがYahoo!ニュースにありましたので貼っておきます。

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「石のまくらに」から「ウィズ・ザ・ビートルズWith The Beatles」まで4編、70歳と老齢になった作者が過去の所業をふりかえるというか、でも50年前だかもっと前だかがもうひとつ風景として迫ってこないのは如何なものか。そういう過去か妄想なのかはどうでもいいけど、おぼろげに見えてきそうな過去の景色が書き割り以下で、そりゃ短編だから仕方ないけど。それも豊田徹也のWith The Beatlesのカバーの影響で引っ掛かっちゃったのかも。「謝肉祭」から「一人称単数」の3編は“罪を犯す”でいいか、女友達が犯罪者だったと、犯罪の告白なのか伝授されたってのかそういうのと、見ず知らずの人から強い敵意を甘受するというのと。罪の構成要素を三つのスポットで表すみたいで、でも具体性のない「醜い女性」というのは分かりにくすぎたなあ。

「猫を棄てる」を読んでおらず、だからスワローズ詩集中で春樹さんの父が“転移しまくるあちこちの癌と、重い糖尿病によって…九十年に及ぶ人生に幕を下ろす”という具合に死んだんだなと知る。作家の父親は早く死んだ方がいいという見本、ねじまき鳥はもっと深く濃く重く鋭い戦争文学の名作になっていたのではと春樹さんの父の長寿を残念に思いましたね。

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