光文社文庫9月刊 佐野洋 墓苑とノーベル賞岩中女史の生活記録

松本清張の初期の短編中で、老残というか過去の小さな成功にすがる醜さを描いた作品がいくつかあった。笛で鳥を呼び集めると評判の老人が、うまくゆかず肩に剥製を乗せ、記者に写真を撮るよう促すとか、その他いろいろ。
まあこちら、佐野洋の連作短編もそんな醜い老人と同じ匂いが。80歳近いんじゃないのか、この人。8編中半分の4編は読み終えてもオチというか結論というか、まあなんというのか一編が終わったことが分からなかったりしたぞ、ひどいものだ。範疇はコージーミステリーなんだろうがそれにしてはユーモアもひどくいがらっぽくざらつき、全然笑えない。
ごく普通の初老の主婦(56歳)がちょっとミステリアスな体験を綴るという体裁で、文体など素人っぽくして、たぶん老いの息切れを隠して…いやいや隠しきれぬままミステリはずんずん破綻しっぱなし。いっそ徳間文庫「推理日記」みたいなミステリレビューで、隠居仕事していてくれればよかったように思う。