購入したのは米澤穂信 秋季限定栗きんとん事件 下

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

創元推理文庫はたいがい月末に購入するもので、今月のようなことはなかなかないこと、というよりこちら上下2冊同時刊行でもちっとも差し支えなかったのでは。いや、いわせていただくなら分冊化の必要もなかったような、あと半分くらいの厚さにしてもよかったような、あまりに長すぎる蛇足小説を読まされた悲しみしかわたしには感想はない。ヒット映画のパート2ってのがどうしてあんなに面白くないのか、ようやく私にわかりました。あれは全体が後日譚なわけなのね。
メキシコで新しい暮らしをはじめたテリー・レノックスのようにはいかず、小山内さんも小鳩くんもそこそこエンジョイの学園生活をおくっておられて、それはまあよかったことだし、結果的には“次善の策”としてもう一段ディープなコンビとなって復活したわけだし推理も冴えたし、めでたしめでたしの予定調和小説だ。
ということですので冬期限定のスイーツはもう食傷か、主人公を代えなきゃね。こんなにもながいながい大団円で、なんだかもうすべての関係性を言い表してしまったようだから、次作への期待はほとんどない。互恵関係っていうあやうさを共有していたふたりが、その鏡面関係からにおいたつみにくさに嫌気ざし“長いお別れ”を選び、だが共鳴するしかない孤独な魂どうしがが“プレイバック”してしまったヘルマン・ヘッセの世界なんて、あなたこんな上下2巻で表現するほどのものかよ。
せめて松丸さんの二股恋愛と本命男とはだれかを推理する小鳩くんとか、小山内さんの購入した609円の文庫本は何だったのかとか、あれれ、わたしってそんなに米澤穂信の悪い読者か。まあ、いずれにせよ小説としての踏ん切れがひどく無様で欲求不満な読書体験でした。