ニューカマーたち

10月より新しい文庫シリーズが登場しました。実業之日本社文庫とPHP文芸文庫。今後のことは不明だが、各文庫新刊にはそれぞれ新刊案内のチラシが挟み込まれていた。実業之日本は二つ折り、PHPは三つ折り、チラシのほかにシオリも入っている。実業之日本は100ページ近い小冊子を店頭で配布しやる気満々だ。両者とも来年からは隔月新刊発売でチラシが入るかも含めウォッチしてゆきたい。

集英社文庫9月の新刊 中島京子 平成大家族

平成大家族 (集英社文庫)

平成大家族 (集英社文庫)

短い小説(文庫300頁以下)中にいろんな“劇的要素”が詰めこまれ、でもそのわりには登場人物たちはひそやかな所作に自我を閉じ込め(ときどき爆発)ているから皆の息遣いや心配りが身近に感じられとてもすてきだ。ドラマとしては消化不良も尻切れトンボも曖昧糢糊もあるところがまあいいような─「美味しい状況」のてんこ盛りが充分楽しめる読書体験でした。
ラストの締めみたいな部分でジェーン・オースティン自負と偏見」との相似を言っており、古典の知識がないのは恥ずかしいな、。とはいえ、それを自分でいえるとはけっこう自信のあらわれなのでしょう。手記にまとめてみようとした一家の主が家庭悲喜劇の何一つも知らないことに気付いてのエンディングが間抜けでとても素敵。
読んでいて驚いたのが、引きこもりの三十歳長男克郎がデブだと気付かなかったこと、そのへんにちょっと作者の腕の未熟さを感じた。キャラクターのそんな大事な情報なのにと、へんに憤慨するわたしだったりして。
でも、ひきこもり克郎の症状が理解できたのは高評価、病的な状態を越えるとプラトーに移行するが、出不精というか怠け癖から脱却し辛くなるんだな。ただし結婚でカッツンハッピーエンドがいいのか、もっと読みたかっただけかも知れないが。
解説で北上次郎が「東京バンドワゴン」と対比してたが、あんなのと対比しないでほしい。ステージが全然違うでしょ。