集英社 新刊案内 2010vol.9 9月14日〜10月5日発行


表紙 注目の一冊 朝井リョウ チア男子!! 
文庫フェア アツさにワケアリ イッキ読みの面白さ 厚本フェア
作家クロニクル 瀬戸内寂聴 自選BEST作品

リーフレットを徒然とみていると「学習漫画 世界の伝記NEXT」でグレース・ケリーが今月発売だそうです。ゲーリー・クーパーと出来ていたとかそういう愛の遍歴も描かれているのかな。同系列なのか「漫画人物伝 ちびまる子ちゃんのキューリー夫人」というのも9月発売。キャラクター原作さくらももこ、漫画石本美穂だそうですが、なんなんだ一体これは。

 発見!角川文庫 もらえる!ハッケンくんグッズby発見!角川文庫 2010.10

文庫のソムリエ─秘蔵の一冊で北村薫の「覆面作家は二人いる」を挙げている書店員さんがいたのだが、あれってぜったい失敗作でしょ、駄作でしょ。
今月購入はその「北村薫のミステリびっくり箱」。探偵作家クラブの会報をいろいろいじくる北村薫とゲストなんだが、もうひとつ深みにまでいかずマニアぶりも空回り。あっとでも、ウソ発見機に関しては面白かったな。ウソ発見機は戦後のもの、日米合作、質問を先に被疑者に見せるとかね。

 2010.9 中公文庫 新刊案内


表紙 新刊文庫案内
表紙裏 あなた向きの謎あります 中公文庫 ミステリー・コンシェルジュ

9~11月新刊のミステリー2冊の応募券で携帯用ブックライトプレゼントだそうで、小さな写真で見る限り欲しいなと思わせる。ただし読みたいミステリーがない。

 早川書房の新刊案内 2010 09


表紙 新刊案内 表紙裏 AXN Mistery(スカパー)

先月ポケミス表紙リニューアルを記したさいに「今後もテキストにあわせたカバーにするのかしら」と首を傾げたけれど心配ご無用でした。てんとう虫みたいなスケーターが不安をかもしてみせるよい出来の表紙でした。
ハヤカワ文庫《数理を楽しむ》シリーズ「E=mc 世界一有名な方程式の『伝記』」に心を動かされたのだが、どうせ中途で投げ出すことになるだろうと諦め、隣りの棚を見たなら中公文庫の新刊で「アバウト アインシュタイン」というのがあった。薄かったし帯やカバー裏レビューには「数式を用いず理論の本質にせまり…」だそうで、そちらを購入しました。…ま、どちらにしろ結果的には同じことだったようで、高校生の時都築卓司のブルーバックス入門書での挫折と同じ体験をしました。

 9 2010 新刊案内 東京創元社


表紙 新刊文庫カバー 大崎梢 背表紙は歌う

MYSTERY通信 (海外)
今月ご紹介する点は、ともに年間ベスト級の絶品です! ウォーターズ『エアーズ家の没落』は、斜陽の領主一家に降りかかる悲劇を語る渾身の大作にして、たくらみに満ちた傑作。かたやオコンネル『愛おしい骨』は、20年ぶりに帰郷した男を待つ事件を迫真の筆致で描いた、著者の新たなる代表作となる傑作です。
MYSTERY通信 (単行本)
『こめぐら』『なぎなた』の2冊は、著者・倉知淳16年の集大成。未収録作品を一挙に収めたファン待望の作品集。鬼才・小林泰三の本領が炸裂する『完全・犯罪』は、「意外な結末」が待ち受ける世にも奇妙な物語。ほっと心が温まる、大崎梢人気シリーズ第2弾の『背表紙は歌う』と、個性豊かなラインナップをよろしくお願いします。
MYSTERY通信 (文庫)
真夏の暑さが落ち着くこの時期にミステリを。第3回ミステリーズ!新人賞受賞作「殺三狼」を含む連作ミステリ、秋梨惟喬『もろこし銀侠伝』。甘酸っぱい青春ミステリ柴田よしき『朝顔はまだ咲かない』。そして、第62回日本推理作家協会賞受賞作、桜庭一樹赤朽葉家の伝説』がいよいよ文庫化。どうぞお楽しみに。
FANTASY通信
9月はマキリップの〈白鳥のひな〉2部作後編『白鳥のひなと火の鳥』。前巻に続き、女魔法使いのニクスといとこのメグエットの女性陣が大活躍。幻想的な物語と魅力的なキャラクターがポイントです。ブックランドは『はみだしちゃった魔女』。変わり者の魔女モーウェンと個性的な9匹のネコが可愛いファンタジー

購入したのは柴田よしき「朝顔はまだ咲かない 小夏と秋の絵日記」だったが、第2話まで読んで挫折。彼女にはネコが主人公のミステリもあるんだがあれも変にネコが活躍なんてしちゃってぶち壊すし。こちらも同じでひきこもりはしっかりひきこもっていなくてはいけない、ひきこもりならではの仕方で復讐とか処理とかしてくれ。どうにもそのへんに情緒のたわみというか我慢が出来ない作家でした。

 集英社文庫 08年11月 改訂新版 広瀬正 T型フォード殺人事件

読むに堪えないというのではなく、作品のこれが限界なのだしこれで仕方ないやと妙な納得をする。広瀬正の遺作というのか死後に出版された作品で、出版から日をおかず読めば違和感はない─松本清張の復讐譚とか当時いっぱい出ていたし。マイナス・ゼロやエロスなどはでも、もしかしたら今でも新しい読者にうけいれられるかもと考えると、すこしやるせないな。
事件が起きたのが昭和2年で、46年後の昭和48年に解決する。当時20代前半だった若者は60代となり、うーん今の時代の60代は団塊の世代でそこそこ若々しいけど、終戦前後の苦しい時代を生きた主人公たちは、おじいさん顔だったのかを想像できずに謎解き部分まできてから、どういう顔をしたらいいのか分からなくなっちゃいました。
逢坂剛の解決部で、スペイン人と日本人が逆になりすましていたとか、実は自分の息子だったとか、あれと同程度で不快とまではいわないが脱力感につつまれましたか。
石川喬司の解説(河出全集の転載)によれば、広瀬正の死は昭和47年3月9日。当時高校生だったわたしには未知の名のまま死んでいったことになる。
大学生になってから日本人SF作家の多くをようやく知ることになったわたしは区立図書館で単行本か河出の全集を借り「マイナス・ゼロ」「ツィス」「エロス」で巧いなあ、騙されたなあ、戦前をこう語るのか、など幾度も頷きつつ読んだものです。
そのときにまあなんだか読み落としたというのか、これとか「タイムマシンの作り方」とかに進むことなかったので、2年前の復刊フェアで手に入れたわけだな。広瀬正をもういちど読みたい、若い人に伝えたいという読書人たちの良質で透明なパワーがこの文庫全集となっているわけで、そういう雰囲気は悪いものではない─けど、わたしが「マイナス・ゼロ」(だけでなく「夏への扉」だって)をもういちど読みたいと思ってるわけではなく、微妙だ。